戦利船・捕獲船・拿捕船

戦利船・捕獲船・拿捕船について

有事の際に海軍によって獲得された船舶は戦利船、捕獲船、拿捕船などさまざまな呼び方をされます。これらはある状況において厳密に使い分けをされる一方、きちんとした定義がないため混乱します。これを筆者なりに分類した場合、下表のようになります。

所有者

確保手段

分類1

分類2

終末

捕獲審検

私船

抑留

抑留船

抑留船

解放

対象外

1

抑留・拿捕

拿捕船

解放船

解放

対象

2

捕獲船

没収

対象

3

国有・公有船

捕獲

没収船

戦利船

没収

対象外

4

沈船

引揚

引揚船

没収

対象外

5

昭和12年8月16日から17日にかけて日清汽船所有の船舶4隻(「洛陽丸」「襄陽丸」「南陽丸」「瑞陽丸」)が爆沈させられ、さらに同社の「岳陽丸」「大貞丸」の2隻も中華民国側に抑留・使用された事件に対し日本側は関係官庁間で協議の上、報復措置として中華民国側の船舶を抑留(1)し使用することにしました【JACAR: B02130169700】。 報復措置といっても支那事変のような平時において所有権の移転を伴う捕獲を私有船舶に対して行うことはできません。
支那事変が長引き、やがて大東亜戦争が始まると昭和16年12月16日勅令第1143号をもって横須賀と佐世保に捕獲審検所が開設されました 【JACAR: A03022664600】。戦時において拿捕された私有船舶は捕獲をはかるため拿捕船舶暫定處理規程に従い捕獲審検所に送致されます。捕獲審検所では審検を行い解放(2) か捕獲(3)の検定を付します。抑留した私有船舶のうち捕獲が禁じられている船舶、例えば病院船など(1)は抑留船として保管され、抑留する正当な事由がなくなった時点で解放されます。
捕獲された敵国又は敵性国の国有又は公有船舶(4)と交戦区域内で沈没あるいは擱座し放置された船舶(5)は捕獲審検所に送致されることなく戦利品として処理されます。船舶の場合「戦利船」、軍艦の場合「戦利艦」と厳密に区分されることもあります。

陸軍が占有を取得した敵船を押収船といいます。陸軍部隊が敵船を押収したときは、便宜の海軍船舶部隊の長にその旨を通報し捕獲手続きに関する処置を委ねます。押収した船舶のうち500総噸数以下で敵性に疑問のないものは確保後速やかに、敵性に疑問あるものは捕獲手続き完了後に、軍の管理下で現地において使用することとされました。また500総噸数以上のものは中央において処理を決定することになっていました。押収船の取扱いについて、正確にはアジア歴史資料センターの【JACAR: C01000110300】をご覧ください。

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