震洋/㊃艇/㊃金物

震洋/㊃艇/㊃金物について

昭和193月末、軍令部総長は海軍大臣に対し九項目からなる特殊兵器の緊急実験製造を提案しました。第四番目の特殊兵器は金物*舷外機付衝撃艇で、これは敵の上陸用船舶を撃沈する目的の特攻艇で、極めて軽い折畳式の舟艇に船外機を付けて航走し、前部に少量の爆装を行うものでした。海軍艦政本部第四部でこの構想を検討した結果、船体は木造、機関は自動車エンジンを使用することで量産性を確保する一方、敵船の水線下に十分な破孔を生じさせるためには約300キロの爆装を必要とすることが判明しました。当初の軽量小型という要求とは全く異なるものとなったため、軍令部と協議の結果、本案にて同意を得、㊃艇の仮称で、昭和19月早々に設計に着手、527日に試作艇の試運転が行われました。木造艇の失敗に備えて試作された鋼製艇は所期の速力が発揮できず、一方、木造艇は計画通りの性能発揮が確認され、量産が決定、828日「震洋」として兵器に採用されました。「震洋」は本来特攻艇でしたが、設計の初期から舵輪の固定装置を備え、救命胴衣を着用した操縦員は後方船外に脱出できるようになっていました。1軸艇の製造がようやく軌道に乗り出した昭和1910月頃、この艇の指揮艇として耐波性及び速力に優れた2軸艇の要求が出され、計画、試作されました。試作の結果は好評で、直ちに1軸艇の半数程度の2軸艇の生産が開始されました。また魚雷艇の建造中止に伴い、その代用艇として三軸艇が計画されましたが、所期の速力が得られず実用化は見送られました。「震洋」の建造は燃料が供給不能となる昭和205月まで続けられ国内で6197隻が完成、さらに中国の三菱重工業江南造船所と同揚樹浦工場で各150隻の計画で製造が行われました。

震洋/㊃艇/㊃金物の諸元

型式

船質

船型

全長(m)

(m)

深さ(m)

満載排水量

速力(kt)

機関

台数

軸数

馬力

乗員

試作艇

V型滑走艇

5.00

 

 

 

 

 

1

1

 

1

試作艇

V型滑走艇

7.00

 

 

 

 

 

1

1

 

1

一型改一

V型滑走艇

5.10

1.67

0.78

1.35

23.00

トヨタ特KC型自動車用機関

1

1

67

1

二型

 

水中翼艇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五型

V型滑走艇

6.50

1.86

0.90

2.㊃0

25.00

トヨタ特KC型自動車用機関

2

2

13㊃

2

六型

 

 

 

 

 

 

 

ガス推進

 

 

 

 

七型

 

 

 

 

 

 

 

火薬ロケット推進

 

 

 

 

八型

V型滑走艇

8.00

2.30

1.05

㊃.00

22.00

トヨタ特KC型自動車用機関

3

3

201

3

 

型式

炸薬量

兵装

船体建造場所

隻数

試作艇

-

日本造船鶴見工場

5

試作艇

-

横須賀海軍工廠造船部建具工場

2

一型改一

250kg

十二糎噴進弾2発

*

二型

 

五型

250kg

十三粍単装機銃1挺、十二糎噴進弾2発

*

六型

 

七型

 

八型

-

特小型魚雷2本、十二糎噴進弾2発

*1量産艇の建造場所:

船体:三菱重工業長崎造船所、日本海船渠、横濱ヨット工作所銚子工場、日本造船鶴見工場、日本造船山下工場、

   神奈川船舶工業所、木村工作所、豊田織機刈谷工場、日本車輌製造、墨田川造船、

   三菱重工業江南造船所、三菱重工業揚樹浦工場

艤装:横須賀海軍工廠、呉海軍工廠、舞鶴海軍工廠、大湊海軍工作部、第百一工作部、第百二工作部

震洋隊の戦歴

下の各隊をクリックしてください。(建造中)

震洋隊

部隊名

上級部隊

編成日

震洋艇

総員

備考

一型

五型

大蝶部隊

父島方面特別根據地隊

S19.09.01

55

 

178

 

松枝部隊

父島方面特別根據地隊

S19.09.02

 

 

190

 

文澤部隊

母島警備隊

S19.09.02

55

 

18㊃

 

香西部隊

母島警備隊

S19.10.12

55

 

185

 

白川部隊

父島方面特別根據地隊

S19.10.12

50

 

189

 

相田部隊

第十方面艦隊

S19.09.02

 

 

18㊃

 

山崎部隊

第三南遣艦隊

S19.09.02

55

 

18㊃

 

石井部隊

第三南遣艦隊

S19.09.02

55

 

18㊃

 

中島部隊

第三南遣艦隊

S19.09.02

 

 

18㊃

 

一〇

石川部隊

第三南遣艦隊

S19.09.25

50

 

187

 

一一

中島部隊

第三南遣艦隊

S19.09.25

50

 

186

 

一二

松枝部隊

第三南遣艦隊

S19.10.12

50

 

188

 

一三

安藤部隊

第三南遣艦隊

S19.10.05

50

 

187

 

一四

池田部隊

第三南遣艦隊

S19.10.05

 

 

188

 

一五

大串部隊

第三南遣艦隊

S19.10.05

 

 

186

 

一六

吉田部隊

八丈島警備隊

S19.10.12

50

 

189

 

一七

林部隊

大島防備隊

S19.10.15

53

 

185

 

一八

島尾部隊

大島防備隊

S19.10.15

52

 

186

 

一九

大河原部隊

石垣島警備隊

S19.10.15

50

 

186

 

二〇

薄部隊

高雄警備府

S19.10.20

50

 

18㊃

 

二一

竹内部隊

高雄警備府

S19.10.20

55

 

183

 

二二

豊廣部隊

沖縄方面根據地隊

S19.10.25

 

 

178

 

二三

幕田部隊

石垣島警備隊

S19.10.25

52

 

18㊃

 

二四

若松部隊

馬公方面特別根據地隊

S19.11.05

68

 

183

 

二五

和田部隊

馬公方面特別根據地隊

S19.11.05

50

 

18㊃

 

二六

毛利→引野部隊

石垣島警備隊

S19.11.05

52

 

18㊃

 

二七

石井部隊

第一一突撃隊

S19.11.05

53

2

18㊃

 

二八

浦本部隊

高雄警備府

S19.11.15

53

 

191

 

二九

永井部隊

高雄警備府

S19.11.15

5㊃

 

191

 

三〇

山本部隊

高雄警備府

S19.11.15

5㊃

 

191

 

三一

栗原部隊

高雄警備府

S19.11.15

55

 

187

 

三二

辻田部隊

海南警備府

S20.01.18

50

 

185

 

三三

福田部隊

海南警備府

S20.01.18

㊃9

 

187

 

三四

伊藤部隊

宮古警備隊

S20.01.20

 

 

 

20.02.25第一一三震洋隊

三四

恒元部隊

第三二突撃隊

S20.02.25

㊃6

190

 

三五

木下部隊

香港方面特別根據地隊

S20.01.20

52

 

185

 

三六

渡辺部隊

香港方面特別根據地隊

S20.01.20

㊃8

2

188

 

三七

織田部隊

厦門方面特別根據地隊

S20.01.20

㊃9

1

191

 

三八

旅井部隊

石垣島警備隊

S20.01.15

50

 

188

 

三九

大串部隊

石垣島警備隊

S20.01.25

 

 

 

 

四〇

安藤部隊

大島防備隊

S20.01.25

55

 

192

 

四一

八木部隊

宮古警備隊

S20.01.25

55

 

188

 

四二

井本部隊

沖縄方面根據地隊

S20.01.25

㊃8

 

188

 

四二

高橋部隊

川棚突撃隊

S20.02.20

㊃6

189

20.0㊃.10第三四震洋隊?

四三

佐藤部隊

高雄警備府

S20.01.08

52

 

167

 

四四

三木→渡辺部隊

大島防備隊

S20.01.25

55

 

178

 

四五

村山部隊

鎮海防備隊

S20.02.25

50

 

188

 

四六

坂口部隊

舟山島警備隊

S20.02.25

52

 

189

 

四七

葛原部隊

第三二突撃隊

S20.05.05

㊃8

190

 

四八

藤島部隊

第三五突撃隊

S20.05.05

㊃㊃

193

 

四九

池田部隊

第二三突撃隊

S20.05.05

52

 

193

 

五〇

中平部隊

第二三突撃隊

S20.05.05

52

 

193

 

五一

坂本部隊

第一六突撃隊

S20.05.05

㊃9

200

 

五二

山岸部隊

舟山島警備隊

S20.05.10

50

 

192

 

五三

井上部隊

第三二突撃隊

S20.05.25

㊃8

5

182

 

五四

丸井部隊

第三三突撃隊

S20.05.25

50

 

180

 

五五

神浦部隊

第一二突撃隊

S20.05.25

50

21㊃

 

五六

岩舘部隊

第一一突撃隊

S20.05.25

52

183

 

五七

里屋部隊

第一六突撃隊

S20.06.25

50

 

175

 

五八

大西部隊

第一二突撃隊

S20.06.25

52

 

173

 

五九

眞鍋部隊

第一八突撃隊

S20.06.25

53

5

176

 

六〇

大澤部隊

第一三突撃隊

S20.06.25

50

5

170

 

六一

高山部隊

第三二突撃隊

S20.06.25

0

 

173

 

六二

山田部隊

川棚突撃隊

S20.06.25

50

 

180

 

六三

安里部隊

第三二突撃隊

S20.07.25

㊃8

177

 

六四

武井部隊

第三二突撃隊

S20.07.25

㊃8

17㊃

 

六五

岩切部隊

川棚突撃隊

S20.07.25

㊃5

5

175

 

六六

 

 

 

 

 

 

→第一四五震洋隊

六七

満野部隊

第一五突撃隊

S20.07.25

5

 

93

 

六八

佐藤部隊

第一二突撃隊

S20.07.25

50

 

9㊃

 

一〇一

西田部隊

高雄警備府

S20.01.18

 

26

183

 

一〇二

佐々木部隊

高雄警備府

S20.01.18

 

25

191

 

一〇三

益田部隊

海南警備府

S20.01.18

 

25

186

 

一〇四

加茂部隊

舟山島警備隊

S20.01.25

 

25

188

 

一〇五

横田部隊

高雄警備府

S20.01.18

 

28

186

 

一〇六

納谷部隊

川棚突撃隊

S20.02.01

 

 

 

20.0㊃.10第一一〇震洋隊

一〇六

濱田部隊

第三二突撃隊

S20.0㊃.10

 

25

185

20.0㊃.10第一一〇震洋隊

一〇七

前川部隊

香港方面特別根據地隊

S20.01.25

 

25

186

 

一〇八

杉田部隊

厦門方面特別根據地隊

S20.01.25

 

25

188

 

一〇九

鈴木部隊

川棚突撃隊

S20.02.25

 

26

188

 

一一〇

濱田部隊

第三二突撃隊

S20.02.25

 

 

 

20.0㊃.10第一〇六震洋隊

一一〇

納谷部隊

川棚突撃隊

S20.0㊃.10

 

25

188

20.0㊃.10第一〇六震洋隊

一一一

後藤部隊

大島防備隊

S20.02.25

 

26

190

 

一一二

木野部隊

第三二突撃隊

S20.02.25

 

26

190

 

一一三

伊藤部隊

厦門方面特別根據地隊

S20.01.20

 

25

186

20.02.25第三四震洋隊

一一四

竹内部隊

舟山島警備隊

S20.02.25

 

25

187

 

一一五

山本部隊

舟山島警備隊

S20.02.25

 

25

191

 

一一六

磯野部隊

第三五突撃隊

S20.03.25

 

26

188

 

一一七

小林部隊

第三三突撃隊

S20.03.25

 

26

188

 

一一八

影山部隊

第三四突撃隊

S20.03.25

 

25

189

 

一一九

田中部隊

鎮海防備隊

S20.03.25

 

26

187

 

一二〇

小野部隊

鎮海防備隊

S20.03.25

 

26

191

 

一二一

藤岡部隊

第三五突撃隊

S20.03.25

 

26

188

 

一二二

隈部部隊

第三五突撃隊

S20.03.25

 

25

185

 

一二三

近藤部隊

第三二突撃隊

S20.05.05

 

26

185

 

一二四

有田部隊

第三二突撃隊

S20.05.05

 

26

233

 

一二五

大串部隊

第三二突撃隊

S20.05.05

 

 

188

 

一二六

青木部隊

第三三突撃隊

S20.05.05

 

26

171

 

一二七

蒔田部隊

第二三突撃隊

S20.05.05

 

25

187

 

一二八

竹中部隊

第二三突撃隊

S20.05.05

 

25

171

 

一二九

佐藤部隊

第一二突撃隊

S20.05.05

 

25

169

 

一三〇

橋本部隊

第三二突撃隊

S20.05.25

 

28

171

 

一三一

直井部隊

第三二突撃隊

S20.05.25

 

 

171

 

一三二

渡邊部隊

第二三突撃隊

S20.05.25

 

25

168

 

一三三

飯田部隊

第三二突撃隊

S20.06.25

 

25

173

 

一三四

半谷部隊

第二一突撃隊

S20.05.25

 

2㊃

168

 

一三五

中村部隊

第一二突撃隊

S20.05.25

 

26

171

 

一三六

斉木部隊

第一五突撃隊

S20.05.25

 

22

235

 

一三七

前野部隊

第一六突撃隊

S20.05.25

 

25

171

 

一三八

渡邊部隊

第一七突撃隊

S20.05.25

 

26

171

 

一三九

田村部隊

第一二突撃隊

S20.06.25

 

26

17㊃

 

一四〇

柳澤部隊

第一六突撃隊

S20.06.25

 

6

172

 

一四一

三溝部隊

第一七突撃隊

S20.06.25

 

0

167

 

一四二

畠部隊

第二一突撃隊

S20.06.25

 

172

 

一四三

大内田部隊

川棚突撃隊

S20.06.25

 

0

171

 

一四四

近松部隊

川棚突撃隊

S20.07.25

 

25

175

 

一四五

上村部隊

第二二突撃隊

S20.07.25

 

8

93

←第六六震洋隊

一四六

宮澤部隊

第一四突撃隊

S20.07.25

 

0

232

 

合計

 

 

 

3,029

1,0㊃6

20,615

 

 

出典:

  1. 「日本魚雷艇物語」光人社 高城直一(P.105-111)
  2. 「昭和造船史第1巻」原書房 日本造船学会編(P.599)
  3. 「写真集 人間兵器 震洋特別攻撃隊」図書刊行会 震洋会
  4. 「江南造船所−歴史と思い出−」江南造船所史刊行会
  5. 雑誌「丸スペシャル」No.53 「日本の小艦艇」潮書房 (P.32-33)

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