木製大發動艇

木製大發動艇について

陸軍の木製大發動艇は鉄製大發動艇の代用として兵器、材料、人員及び馬匹等の海上補給輸送に使用するために開発されました。木製大發動艇を陸軍では木製大發、もしくは木發と略称しました。海軍では雑役船に分類されたものを15米發動機附運貨船(木造)と称します。陸軍運輸部金輪工場で試作の上、昭和17年12月頃より広島付近や近畿地方の木造船所で第一回200隻が建造されました。また、昭和17年秋に横浜ヨット工作所にて耐水ベニヤ板を使用した試作艇を製作し、試験の結果、強度を改善した艇 200隻を日産農林鶴見工場に発注しました。これらは合板製大發と呼ばれました。その後、昭和19年6月には舶用化車輌用機関を装備する艇の研究が開始され、同年10月上旬に広島県の増岡造船所で試作艇が完成し、同年10月13日から17日にかけて広島湾で実用試験が実施されました。また、昭和18年10月からは現地で組立可能な合板製大發動艇の研究も開始され、昭和19年7月上旬千葉工作所で試作艇が完成、同月に組立試験、海上運航、揚陸試験が実施されました。

昭和20年5月現在の区分は「輸送用舟艇」で主体類別は「一類」、取扱区分は「普通」でした。 (JACAR: C01007870400)

木製大發動艇の諸元

全長:14.55m、幅:3.33m、深:1.52m、満載排水量:23t、自重:11t、

搭載量:10t(武装兵70名又は馬匹8頭又は貨物自動車1台)、

機関60馬力ディーゼル。

一般木造船型、船首は鋼製大發と同様歩板式とし鋼材を用いた。船底形状はW型。

 

(舶用化車輌用機関装備艇)

全長:14.500m、幅:3.300m、深:1.500m、平均吃水:0.800m、満載排水量:23t、自重:約11.000t、

搭載量:約12.5t(武装兵80名又は馬匹10頭)、

巡航速力:(常備)7.73kt、(軽荷)8.34kt、

機関:純舶「ロケ」機関(舶用四式水冷直六筒ディーゼル発動機)1基、出力80馬力、

 

(合板製大發動艇)

全長:15m、幅:3.6m、深:1.6m、自重:7.5t、満載排水量:23.7t、

搭載量:16t(武装兵80名又は馬匹10頭又は87式戦車1台)、

速力:7.5kt、

機関:60馬力ディーゼル、

乗員6名。

船首は開閉式ですが歩板兼用とはせず別に歩板を有していました。

 

(組立式合板製大發動艇)

全長:15.000m、最大幅:3.200m、深:1.600m、平均吃水:(軽荷)0.400m、(満載)0.790m、

満載排水量:23t、自重:約7.500t、

搭載量:8t(武装兵80名又は馬匹10頭)、

巡航速力(満載):7.5kt、

機関:純舶「ロケ」機関(舶用四式水冷直六筒ディーゼル発動機)1基、出力:80馬力

歩板は四式木製大発動艇のものと同一、船首船底形状は平底型。

 

出典:

  1. 「昭和造船史第1巻」(原書房) 日本造船学会編(P.764)
  2. 昭和十九年第十陸軍技術研究所研究報告(JACAR:A03032287300-89画像目から)
  3. 昭和十九年第十陸軍技術研究所研究報告(JACAR:A03032287300-137画像目から)

 

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